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糖尿病事始め 患者から学ぶ糖尿病

糖尿病事始め 患者から学ぶ糖尿病

【電子書籍】

糖尿病専門医としての著者の長年の経験から語る糖尿病患者さんを援助した記録を60枚余のカラーイラストを加えて具体的に紹介。

さまざまな患者さんのエピソードを通じて、医療スタッフにとっては新しく学ぶ糖尿病の「知恵と知識」の書となり、患者さんには糖尿病療養生活の知恵袋となる。

よくある質問をまとめた33のQ&Aを付録に。

医師、糖尿病療養指導士、看護師、栄養士、薬剤師、臨床検査技師などの糖尿病患者さんに関わる医療スタッフに。糖尿病患者さんとその家族に。


はじめに



 糖尿病は生活習慣病の1つですが、年々増え続ける糖尿病を予防することがむずかしく、重要な社会問題の1つになっています。


 厚生労働省が「健康日本 21」 を策定し、運動をすすめていますが、市民の動きはまだ鈍いのではないでしょうか。1つは糖尿病をよく理解できないでいるためかもしれません。高血糖の意味が高血圧ほど浸透していないのです。実際に医療の現場では糖尿病の治療に四苦八苦しているのです。医療側も患者さんのことをよく理解できないまま、何とか治療を続けており、糖尿病合併症によるQOL(Quality of life)の低下を防ごうと必死に努力しています。


 問題は2つあります。第1に糖尿病になっていない市民に病気の予防が必要だというメッセージをどのように伝えればよいかということです。第2に糖尿病で苦しんでいる患者さんにどう対処すればよいかということです。糖尿病は高血糖が持続することが特徴である病域ですから、血糖を下げればよいのだと安易に考えがちです。それが予想に反して大変なことなのです。


 本書の目的は糖尿病専門医がこれまで苦労しながら、患者さんを援助した記録を中心にして新しく糖尿病を学べる書物にしました。


2004年2月吉日
豊田隆謙


目次

1 糖尿病の概念
 1 有名人が糖尿病だから安心というわけではない
 2 糖尿病といわれたが糖尿病ではない
 3 遺伝と文明の関わり
   A 私自身に糖尿病遺伝負荷があるかどうか

2 生活習慣
 1 糖尿病はライフスタイル病(生活習慣病)
 2 太りすぎは禁物
   A 肥満の原因
   B 内臓脂肪型肥満に注意
 3 正しい生活スタイル
 4 生活習慣の改善により減量に成功した患者さん
 5 社会で働くこと
  A 才能に適した職業選択
  B 残業
  C 単身赴任者に必要な糖尿病ケア
 6 家庭生活
  A 夫婦で協力
  B 妻の努力
  C 夫や父としての心構え
  D 家族の心得
  E 家事をするお母さんの糖尿病対策
  F 1人暮らしは大変
  G 入試を準備する糖尿病の子供たち
 7 生活の知恵
  A 歯を大切にして長生き
  B ストレスと折り合う
  C 旅行中の血糖調節のポイント
  D 甘味とコーヒー、お茶
  E アフターファイブ
  F 睡眠障害について考える
  G シックデイを乗り超えるために
 8 糖尿病と慢性疾患
3 疫学統計;日本人の糖尿病は何人か
4 分類
 1 1型糖尿病
  A インスリン抗体陽性の1型糖尿病
  B 75gOGTTで正常でも2週間後に発症した劇症1型糖尿病
  C 小児の1型糖尿病
  D 健康な子供を産むためには
 2 2型糖尿病
  A 小児2型糖尿病
  B 2型糖尿病と合併症
  C 新婚旅行後に突然失明した例
 3 1型糖尿病と2型糖尿病の違い
  A 歴史的事項
  B 1型糖尿病の特徴
  C 2型糖尿病の特徴
  D 糖尿病が進行すればどちらも糖尿病合併症を起こします
  E 境界型糖尿病
 4 その他の特定疾患に伴う糖尿病
  A 膵炎後糖尿病
  B リポアトロフィック ディアベテス
 5 妊娠糖尿病
  A 妊娠糖尿病か糖尿病女性の妊娠か
  B 妊娠中に発症した1型糖尿病
  C 1型糖尿病患者さんの結婚、妊娠、出産
  D 妊娠と糖尿病
5 診断と検査
 1 糖尿病の診断
 2 ヘモグロビンA1cと田中耕一さん
 3 血糖自己測定値の偽申告者の心理
6 食事療法
 1 漱石の食事療法
 2 食事療法のこつ
  A 食事療法の原則
  B 食品交換表の使い方
  C 食品交換表のもう1つの特徴
  D 食事の実際
  E インターネットから得られる情報
  F 献立、調理、盛り付け、食べ方
 3 間食と生活の楽しみ
 4 有意義な人生とは
 5 間食と捕食の違い
 6 イタチごっこ
 7 食文化
 8 快便で楽しい人生を
 9 飲酒と自律神経障害
7 運動療法
 1 肩肘張らない運動療法
 2 低血糖に注意して積極的に運動をしよう
 3 楽しく続けるウォーキング
 4 運動療法とスポーツ
  A スポーツ選手が糖尿病になれば
  B 患者さんがスポーツを始めれば
  C スポーツは「ぼけ」防止になるか
 5 山で必要な管理とケア
  A 運動量と血糖コントロール
  B 安全な登山の条件とは
8 糖尿病治療薬
 1 種類
  A スルホニル尿素薬 (SU薬)
  B フェニルアラニン誘導体
  C ビグアナイド薬
  D α-グルコシダーゼ阻害薬
  E インスリン抵抗性改善薬
 2 薬の機序と使い方
 3 糖尿病薬以外の薬 (シックデイのときに使われる薬)
  A かぜ薬
  B 胃薬
  C 腸薬
  D 頭痛、腹痛薬
  E ビタミン剤
  F 漢方薬
  G糖尿病に関連した民間療法
9 インスリン
 1 膵β細胞で作られるインスリン
 2 インスリン注射
  A インスリンの種類
  B インスリンの生物活性
  C インスリン注射を開始する方法
  D インスリン製剤の選択
 3 副作用
 4 ペン型注射器
 5 インスリン強化療法
  A 今後の課題
 6 数年分のインスリンをストックしたままあの世に旅立った患者さん
10 治療の動機づけ
 1 死にたくない一心で取り組んでいる糖尿病患者さん
 2 ドライバーが飛ばない
11 低血糖
 1 ショッキングな低血糖
 2 地震のときの低血糖に備える
 3 低血糖はなぜ起こるか
 4 おこりんぼさんの低血糖
 5 無自覚低血糖による交通事故
 6 自殺未遂
12 糖尿病網膜症
 1 失明して欧州旅行
 2 糖尿病網膜症にならないために
  A 目が見えなくなる
  B 一体何がわるいのか
  C どうすれば網膜症を防げるか
 3 メガネでなく目がわるかったのです
 4 網膜症の眼科的治療
13 糖尿病神経障害
 1 抹消神経障害
 2 神経障害と心筋梗塞
14 糖尿病腎症
 1 糖尿病腎症の原因
  A 遺伝因子
  B 糸球体細胞代謝異常・機能異常 (発症機序)
  C 慢性腎不全の進行過程
  D 夫婦合わせて毎回血糖値800mg/d/以上
15 糖尿病足病変
 1 糖尿病足病変の起こり方
 2 足の病変に気をつける
16 大血管障害
 1 大血管障害を防ぐ
 2 脳血管障害
 3 無症候性脳梗塞
 4 心筋梗塞
 5 血圧管理
  A ストレスは血圧を上げます
  B 食塩の摂りすぎは血圧にわるいのです
  C 交感神経β受容体ブロッカーは交感神経を抑えて血圧を下げる効果があります
17 てこずり糖尿病
 1 人格障害とされた糖尿病患者さん
 2 爆発する患者さん
 3 糖尿病教育の困難な例
 4 糖尿病患者さんの知恵?
 5 民間療法に走った36歳女性
18 糖尿病治療を支える人たち
 1 糖尿病療養指導士
  A 糖尿病療養指導士になるための資格
  B どのような仕事が望まれるか
  C チーム医療
  D 患者さんが知りたがること、嫌がること
 2 コンピュータは医療にどう関わるか
  A 食事療法の助っ人

付録 Q&A
◆糖尿病診断について
Q1 会社に勤める50歳の男性が会社の健康診断で糖尿病といわれました。血糖が高くて、尿に糖が出ていると説明されました。糖について教えてください。
Q2 砂糖とは違うのですね。
Q3 血糖は血液の中のブドウ糖ですね。
Q4 健康診断で、空腹時血糖が150mg/d/といわれました。どういう状態ですか。
Q5 私の家内は、私の体重より重く、太っているのですが、空腹時血糖が125mg/d/でした。糖尿病ではないのですか。
Q6 ブドウ糖負荷試験を説明してください。
Q7 食後血糖値とブドウ糖負荷試験の2時間値はおなじですか。
◆血糖調節について
Q8 血糖についてもっと教えてください。食後血糖が高くなるのは、食事が原因ですね。
Q9 炭水化物というのは、どのような食事に多く含まれているのですか。
Q10 脂肪やたんぱく質だけを食べると、血糖は上がらないのですか。
Q11 血糖調節の仕組みを教えてください。
Q12 高血糖になると、どのような変化がからだに起こるのですか。
◆糖尿病について
Q13 まったく気づかない糖尿病があるのですか。
◆糖尿病の検査について
Q14 血糖が高いだけの病気であれば、糖尿病とわかったときに病院では色々な検査をします。なぜですか。
Q15 どのような検査が必要になるのですか。
Q16 微量アルブミン尿について教えてください。
Q17 アポ蛋白E遺伝子とは何ですか。
Q18 LDL−コレステロール、HDL−コレステロールについて教えてください。
Q19 遺伝子検査をしないのですか。
Q20 テーラーメード医療(個別医療)について説明してください。
Q21 末梢神経検査にはどのようなものがありますか。
◆糖尿病の治療
Q22 糖尿病の治療では食事療法が大切ですか。
Q23 糖尿病薬を使うのはどのようなときですか。
Q24 インスリンとはどのようなものですか。
Q25 インスリンは、たんぱく質ですか。
Q26 インスリンは、膵臓のどこで作られているのですか。
Q27 インスリンの研究者がノーベル賞を受賞しましたか。
Q28 インスリン療法を行う場合、血糖値を25mg/d/下げるレギュラーインスリンはどのくらいでしょうか。血糖値を25mg/d/上げる炭水化物は何グラムですか。
Q29 インスリン抵抗性について説明してください。
Q30 インスリン抵抗性症候群/シンドロームXの定義を教えてください。
Q31 インスリン抵抗指標がありますか。
◆糖尿病の病気論議
Q32 病院で糖尿病と診断されましたが、何も苦痛がなく、本当に病気かと疑います。
Q33 diabetes disease (合併症を伴う糖尿病)について説明してください。

付録 糖尿病と数字、糖尿病昏睡の診断に使う式、閉塞性動脈硬化性の診断に使う式