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脂質異常症診療Q&A

脂質異常症診療Q&A

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◆動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症の日常診療における様々な疑問点を139のQ&A形式にて第一線の臨床の専門家が解説。

◆冒頭に座談会「ガイドラインを実地診療に活かすには」を掲載

◆読者対象は、臨床医、薬剤師、栄養士、看護師など


序文


2007年に,「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007」が発表されて,3年を経過した。
日本動脈硬化学会は,このガイドラインの一般医家への流布を目的として,各所で啓発講演会を開いてきた。続いて,2008年の「脂質異常症治療ガイド2008」が発表され,より具体的な「脂質異常症」に対する対応について,同様の啓発活動を行ってきた。この啓発活動は,学会の資金で,学会員と各地医師会の先生方との協力のもとに実現された。各方面のメーカーの方々とは独立して行ったのは,お伝えする情報の中立性を担保するためであった。お集まりいただいた先生方には,ガイドラインの主旨を,十分お伝えできたものと確信している。しかし,啓発活動こそ,多数の先生方にお集まりいただき,その主旨をお伝えしたいところであったが,必ずしも多数の先生方にお集まりいただいたというわけではなかった。


 本書は,ガイドラインの主旨を活字としてお届けし,ガイドラインの本音をお伝えしようとするものである。ガイドライン作成にかかわったものと,その受け手である一般医家として活躍されている焦先生にも加わっていただいたのは,ガイドラインのどこがわかりにくいのか,本当はどこが知りたいのかを明確にするつもりであるからである。その多くの問題について,Q&Aというような形で作成させていただいた。


 脂質異常症は,わが国で年々増加の傾向にあり,これに従って動脈硬化性疾患の増加が懸念される。まだ,わが国は,欧米諸国のような心筋梗塞多発国ではないが,世界でも屈指の高齢化社会を迎えたわが国では,絶対数としての心筋梗塞・狭心症は爆発的な増加を示していることは多くの医療者の感じているところではなかろうか?従来,医療の目的は,疾病者の治療をすることにより早期の社会復帰を実現することであった。しかし,最近は,その前の段階で防ぐことこそが,社会資源確保としても重要であり,医療費の問題にとっても重要課題となってきていると思われる。


 この点は,2008年から始まった特定検診に色濃く表れている。特定献心の目的は,脳・心血管病を予防することである。なんとなれば,この両者を加えた死亡率は悪性腫瘍と同様ほぼ30%を占めるのである。そして,脳・心血管病の危険因子の多くが一致していることから,その危険因子を取り除くということが死亡率の低減化,すなわち,健康寿命の延伸につながるということである。そして,脳・心血管病は患者のADLを著しく低下させ,社会資源の低減化,医療費増大という結果を招く。したがって,社会的・経済的観点から考えても,脳・心血管病を予防することは国家的にも重要課題の1つである。


 特定検診の中心的病態としてメタボリックシンドロームを組み入れたのは慧眼である。つまり,肥満という「状態」を改善させるだけで,高血圧,糖尿病,そして脂質異常症を予防できるのであり,このエンドポイントとしての脳・心血管病を予防できると期待されることから安上がりな予防法(治療法)ということが出来よう。もちろん,そこには特定検診という保健行政的医療行為がなされるのであるから,そこにかかわる経費という問題を考えておく必要があるのはもとより承知のことである。それゆえにこそ,そこから浮かび上がってくる高血圧や糖尿病,そして脂質異常症に対する対応が的確になされる必要があるのである。


 本書の目的は,脂質異常症管理の重要性を十分理解していただき,的確な対応を行うことにより,真のエンドポイントである脳・心血管病を確実に予防できるという道筋を理解していただくことである。
 医療行為は,患者のためはもちろん,社会のためにも極めて重要な行為であることを再認識して,高邁なるプライドを持って,脂質異常症対策に寄与していただければ幸いである。


2010年11月吉日
編集者



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