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JMPマガジン63

(あの松阪市民病院でも達成できたんだ!)

DPC/PDPS導入を契機にした自治体病院の経営改善

DPC/PDPS導入を契機にした自治体病院の経営改善

■DPC/PDPS導入を契機に自治体病院の経営を大幅に改善させ、医師・看護師の人事評価制度導入により職員のモチベーションを向上させた松阪市民病院の3年間の取り組みを紹介。

■本書を読めば出来るのにあきらめている事が多い事に気付くのではなかろうか。

■「全国自治体病院協議会雑誌」の3回の連載をまとめた。

■自治体病院経営陣・医療職・事務職幹部、DPC導入担当者に。


はじめに


 いま,地域医療を根底から揺るがすような大きな変化が全国各地で発生し,「医療崩壊」と呼ばれるようになり,新聞,テレビなどのメディアで大きく取り上げられています。医師不足,看護し不足が病院経営に大きな影響を及ぼすことは周知の事実です。この医師不足問題は平成16年の医師新臨床研修制度が実施されたころより顕在化しました。各大学,とりわけ地方の医学部付属病院の新しい入局医師が不足し,それぞれの大学病院が医局の機能を維持していくために,これまで地域の病院に派遣していた医師を大学病院に引き揚げるような事態が起こったからです。このことにより,これまで良きにせよ,悪しきにせよ大学医局人事から派遣された医師に依存していた病院では大きな打撃を受けました。さらに,追い打ちをかけるように政府の医療費抑制策が病院経営を逼迫し,特に地方の自治体病院でこの影響は大きく,最悪の場合には統合,閉鎖にまで追い込まれているのが現状です。


 当院を取り巻く近隣の自治体病院,公的病院はすでにDPC/PDPSを導入しており,当院も今後急性期医療を標榜し,持続していくためにはDPC/PDPSの導入が不可欠であるという認識のもと,医師不足,看護師不足を中心にした厳しい医療環境下ではありましたが,平成20年4月よりDPC/PDPSを導入しました。DPC/PDPSを導入し,グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン社とメディカル・データ・ビジョン社が共同開発した分析ソフト「EVE」を活用して,全国の複数病院の患者データを分析し比較する,すなわちベンチマーク分析を行うことが可能となったことによって,自院の立ち位置が明白となり,改善すべき点を全職員が理解しました。


 私たちの病院のように医師,看護師が不足している病院でも,地方のそれほど大きくない病院でも,建築後年数のたった古い病院でも,このDPC/PDPS導入を契機として,全職員の意識改革が進み,大幅な経営改善をすることができましたので報告し,本書が現在日夜病院経営で悪戦苦闘している病院,特に自治体病院の人々に少しでもお役にたてれば幸いです。


 全職員の力を結集し,現在の医療制度を十分に理解し努力すれば組織形態を変更したり,他の医療機関と統廃合することなく現状のままでも,多くの病院で経営改善されることを信じております。
平成23年3月吉日


松阪市民病院 総合企画室副室長
世古口 務


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