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JMPマガジン67

病院再生への挑戦

本書は「病院再生研究会」で語られた、苦境に陥った自治体病院を見事に再生させた関係者の実践事例をまとめた。

苦境に陥った病院をどのように再生すべきか?様々な関係者が力を結集し、取り組んだ病院再生の成功事例から解決策を学ぶ。


序文


全国各地の自治体病院が,苦境に陥っている。自治体病院はいま患者減,医師不足,高コスト体質による累積赤字の三重苦にあえいでいる。しかし根本的な解決策を見いださず,いたずらに放置すれば,銚子市立総合病院のように,忽然として診療を停止してしまう病院も,これからは稀とは言えなくなるだろう。


なぜこのように地域の病院は追い詰められることになったのだろう?


こうした疑問から,2008年より我々は「病院再生研究会」を立ち上げ,苦境に陥った病院をどのように再生すべきかについて,その実践事例を通じて学ぶこととした。研究会では毎回,病院再生に実際に携わった方々をゲストスピーカーとしてお呼びして,率直なお話をお聞きした。その生々しい病院再生へのチャレンジ事例をとりまとめたのが本書である。


毎回のゲストスピーカーの病院再生事例のお話は手に汗握る迫真に満ちたものであった。たしかに本書を客観的な冷めた目で読まれれば,「一方的な立場で論じている」と感想を持たれる読者の方もいるかもしれない。しかしお話を直接聞いた我々としては,現場の当事者の熱意と迫力に圧倒され続けた。それほど病院再生事例のお話は,迫真力に満ちていた。


たしかに皆さんは,明日にも病院がなくなってしまうかもしれないという切羽詰った状況に追い詰められ,時間勝負の中で,再生のための問題解決へ向けての努力と決断をされていた。そうした強烈な当事者の意識と責任感こそが病院を救うのだとつくづく感じた。


また同時に病院再生にはさまざまな関係者の力の結集が必要なことも分かった。再生には医師・看護師の確保,施設設備・建築設計,そして資金調達が必要だ。本書でもこれらに携わった企業関係者についても一部とりあげている。そしてなにより病院再生には病院を支える地域住民のサポートが必須だ。こうしたことを病院再生のドラマは教えてくれる。


さて,本書を病院再生に取り組んでいる当事者の方々,そして医療従事者,さらに病院をサポートする多くの企業関係者の方,地域住民の方に読んでいただきたい。そして本書を地域病院の再生の一助としていただければ,著書一同の望外の幸せとするところだ。


2011年8月盛夏 東京乃木坂にて


【目 次】

第1章 地域医療再生とは―旧態化した構造の「破壊」と新たな価値観の「創造」
東日本税理士法人代表社員  長  隆
第2章 病院再生のPFIの活用について
金沢大学教授・金沢大学附属病院経営企画部長・金沢大学附属病院副病院長(予算・経営管理担当)  長瀬 啓介
第3章 地域病院再生における医師確保
メディカル・プリンシプル社  松本  洋
第4章 十和田市立中央病院の経営改革事例―経営マネジメントの構築を目指して― 
青森県十和田市副市長  小久保純一
第5章 産める・育てる街作り ―上野原市地域医療再生事業の現状―
上野原市長  江口 英雄
第6章 千葉県山武医療センター構想について―山武地域医療センターからさんむ医療センターへの経緯―
さんむ医療センター理事長  坂本 昭雄
第7章 安房医師会病院の再生事例 
安房医師会会長  宮川  準
第8章 岐阜県総合医療センター独法化の現状と将来について
岐阜県総合医療センター理事長・院長  渡辺佐知郎
第9章 大学病院の視点から見た愛知県における地域医療再生の取り組み
名古屋大学医学部附属病院長・腎臓内科教授  松尾 清一
第10章 和歌山県那智勝浦町立温泉病院再生事例
和歌山県立医科大学名誉教授・那智勝浦町立温泉病院地域医療研究センター総長  南條輝志男
第11章 地域医療再生事業について 
厚生労働省医政局指導課課長補佐  川谷 良秀