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JMPマガジン74

漢方事始め

実地医家のために漢方の考え方と実際を三部形式で分かりやすく解説。

第1部「対話・東洋医学と西洋医学の接点」、第2部「対談・漢方の実際」、第3部は筆者が各地の講演会で配布し好評の「漢方エキス製剤の運用法」いわば『漢方処方のマニュアル』を掲載。


はじめに

 西洋医学だけを専門にされてる先生には,「漢方なんか本当に効くのかね」をいう疑問をいつもぶつけられますし,また漢方を専門にやられてる先生は,「西洋医学は検査と薬漬けで,しかもあまりに専門分化して患者さんの心身をふくめた全体像を診ていないのではないか。化学合成薬品や抗癌剤は特に恐い」という意見を口にされます。たしかにそういう面はあろうかと思いますが,私個人としては,両医学はそれぞれ確立した方法論と実績を持ちそれぞれの有効性はすでに十分証明されてきていると思っています。


 ただし日本は漢方専門学校がありませんので,日本で漢方を臨床実践する場合には西洋医学の免許を修得して後の本人の努力しかありません。しかも西洋医学を修得しますと,他の医学,特に漢方のように古くて?方法論も違う別系統の医学を勉強しようとする必要性を感じない場合も多いと思われますが,本当にそうでしょうか。


 たとえば,かぜの患者さんを診る場合,患者さんの体質や西洋薬の反応性はさまざまであり,なかには治療に難渋した経験をされた先生も多いと思います。そんなケースに漢方を使用してみたらどんなメリットが得られるのか。自分の医療の幅がもっと広がるのではないのか。


 そんな立場で,すなわち漢方を専門にしている筆者が,西洋医学の先生方との対話形式で,大分県医師会報(第452~472号)に連載したものに加筆訂正しまとめたのが第1部「対話・東洋医学と西洋医学の接点」です。第2部「対談・漢方の実際」は山田博一先生との対談を転載させていただきました。第3部「漢方エキス製剤の運用法」は筆者が講演会等で配布し好評だった,いわば“漢方処方のマニュアル”です。


 最後に推薦の序文をお寄せいただきました恩師の山田光胤先生に感謝するとともに,対談記録の転載をご快諾いただいたご長男の山田博一先生に感謝申し上げます。


平成9年5月14日
織部 和宏


目次

第1部 対話・東洋医学と西洋医学の接点
 1.西洋医学と漢方の証
 2.漢方的診断とは
 3.かぜ症候群の漢方治療
 4.気管支喘息の漢方治療
 5.副鼻腔炎の漢方治療
 6.中医学と日本漢方
 7.水毒と日本人
 8.薬味,薬性
 9.美人になる漢方
 10.肥満と漢方
 11.乾燥肌と漢方
 12.冷え性と漢方
 13.髪と漢方
 14.消化性潰瘍と漢方
 15.慢性膵炎と漢方
 16.慢性肝炎と漢方
 17.過敏性大腸症候群と漢方
 18.慢性下痢と漢方
 19.体質分類と漢方
 20.婦人科疾患と漢方,瘀血について
 21.高血圧症と漢方
 22.不整脈と漢方
 23.頭痛と漢方
 24.五十肩と漢方
 25.慢性関節リウマチと漢方
 26.変形性関節症と漢方
 27.腰痛症と漢方
 28.コムラ返りと漢方
 29.ニキビと漢方
 30.アトピー性皮膚炎と漢方
 31.老年病と漢方
 32.参考図書

第2部 対談・漢方の実際
 山田博一/織部和宏

第3部 漢方エキス製剤の運用法