連載

Home

list

ドクターさわやまの「当世健康講座」:亭主を早死にさせる10か条

第7条 “フーッとなる”「遊びが過ぎて 寝不足よ」

最近読書の最中に妙に目の前が暗くなって意識が遠のくように感じた65歳の夫が妻に向かってこのように訴えました。一方妻は「あなたったら最近夜遊びが過ぎるから、そりゃあ寝不足だと思うなあ」と返しています。

寝不足で眠いときにも一瞬“フーッとなる”ことがありますが、この場合も果たしてそうなのでしょうか。

「目の前が暗くなって意識が遠のくように感じる」ときは医学的には心臓疾患や脳疾患に注意を向けましょう。心臓疾患だとすればこの症状は何らかの理由で心拍が何秒か停止したときに起こる脳の虚血状態を示すサインです。また脳疾患だとすれば、脳梗塞の前駆症状と考えてよいでしょう。両者とも放置しておけない兆候です。この夫の場合は、あとのほうつまり脳梗塞の準備状態だということが後日の診療で判明したのです。

というのは、彼はある企業の重鎮で、ヘビースモーカーであり、健診では高血圧と脂質異常症(高脂血症)を指摘されたにもかかわらず一度も精密検査や治療を受けていなかったのです。
友人の勧めでまもなく当院を受診されました。早速受けていただいた血圧脈波検査で高血圧に加えて頚動脈の硬化が疑われたので頚動脈エコー検査を施行したところ、左右の頚動脈にプラークと呼ばれるコレステロールの塊が発見されました。

その結果、受信当日から脳梗塞の予防のためにアスピリン(抗血栓薬)に加えて降圧薬を服用し始めていただきました。

最近ではこのコレステロール塊が脳動脈に移動して動脈を閉塞するタイプの欧米型脳梗塞が増えています

というわけで、夫の症状を妻の言う「寝不足」で片付けてしまっておれば、今では半身不随状態で車椅子生活を余儀なくされていたかも知れませんね。