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JMPマガジン52

生物学的製剤による難病の治療革命

生物学的製剤による難病の治療革命

◆生物学的製剤による治療革命は、自己免疫疾患、悪性腫瘍、移植 拒絶に留まらず、炎症性腸疾患、多発性硬化症などの神経疾患、天 疱瘡、乾癬などの皮膚疾患、ベーチェット病眼病変、小児疾患などの 多様な難病へも誘導され、各領域で治療のブレークスルーを引き起 こす勢いである。

◆本書では、生物学的製剤の領域の斯界の先生方にご執筆戴き、 病態と治療の新しい考え方、新規治療導入の実際、今後の新展開 に至るまでをまとめた。

◆関節リウマチをはじめ、多様な難病の治療や研究にあたる専門医、 研究者に必読書である。


序文


 30年前に発表されたモノクローナル抗体をはじめ,遺伝子組み換え技術により精製された生物学的製剤は,特定の標的分子の制御を目的として臨床応用されてきた。2001年の悪性リンパ腫に対するCD20抗体リツキシマブ,2002年のクローン病に対するTNF−α抗体インフリキシマブに続き,新規の生物学的製剤が続々と承認され,癌,自己免疫疾患,移植拒絶などの多様な疾患の治療に大変革を促しつつある。


 イランスレーショナルリサーチという言葉が流行って随分と経つが,関節リウマチに対するTNF−α阻害薬はトランスレーションが最も成功した例である。TNF阻害薬は,関節リウマチの臨床的寛解,構造的寛解,機能的寛解に加え,薬剤フリー寛解をも可能とした。リウマチ治療のパラダイムシフトは,他の内科疾患の同様にQOLや生命予後改善を目標とすることを可能として患者や臨床医に福音を齎し,また,免疫学手法による免疫難病の治療を現実のものとして基礎研究者にも多大なる勇気を与えた。


 生物学的製剤による治療革命は,自己免疫疾患,悪性腫瘍,移植拒絶に留まらず,炎症性腸疾患,多発性硬化性などの神経疾患,天疱瘡,乾癬などの皮膚疾患,ベーチェット病眼病変,小児疾患などの多様な難病へも誘導され,各領域で治療のブレークスルーを引き起こす勢いである。また,斯様な新展開は,サイトカインのみならず,シグナル受容体,細胞表面機能分子などの多彩な標的分子や標的細胞へと拡大しつつある。


 本書では,生物学訂製剤の領域のオールスターともいえる先生方にご執筆いただき,病態と治療の新しい考え方,新規治療導入の実際,今後の新展開に至るまで,タイトルに相応しい内容に纏まった。生物学的製剤という視点からベンチとベッドサイドの距離が短縮されつつあることが実感でき,さらなるモチベーションを提供することができればと期待している。

2009年7月
田中 良哉


【目次】