JMPマガジン142
リウマチ・膠原病患者さんとそのご家族のための外来通院学
【対象】リウマチ・膠原病患者さんとそのご家族
【著者より】
外来診療をより良いものにするためには患者さんご自身による心がけが欠かせません。その上でぜひとも知っておいていただきたいことをまとめたのが本書「外来通院学」です。
「この一冊を読めば病気や通院に関わる多くの悩みが解消される」ということを目指して作りました。
「わかりやすさ」「読みやすさ」を最優先にして構成していますので、医学的な内容が苦手な方もどうぞご安心ください。
【主な内容】
- ・外来通院学とは・リウマチ・膠原病は治るのか
- ・リウマチ科と膠原病内科の違い・治療に使う薬の考え方
- ・飲み忘れが許されない薬・治療の考え方(医師の頭の中)
- ・入院や退院を決断する時・膠原病の診断が難しいワケ
- ・まずは病気を受け入れる・かかりつけ医を持つ
- ・健診と検診の違い・インターネット情報には注意する
- ・「感染に気をつけて」の真意・主治医はいつか変わるもの
- ・妊娠・出産は可能か・風邪をひいたときの対応
- ・外来診察時のコツ・ジェネリック医薬品の正体
- ・外来に費やす時間の短縮方法・ご家族へのお願い など
まえがきより
避けられるはずの負担やリスクを多くの患者さんが背負っているのではないかという危機感
2018 年6 月に私が勤務する大分市で開催されたリウマチ・膠原病患者さんの会で、初めて患者さん向けの講演を行いましたが、その際の反響に驚きました。
「もっと早く聞きたかった」「もう一度聞きたい」「耳が遠くて聞きとれないところもあったから本にして欲しい」などのありがたいご感想をいただきました。
準備に時間をかけた分嬉しかった半面、ちょっとした危機感も覚えました。実はこのような感想を述べた方の中には私の外来に通院されている方も含まれていたからです。
私としては普段の外来で説明しているようなごくごく初歩的な内容を「復習」していただくことを目的とした講演のつもりでしたが、実際には「新しい情報」として聞き入れてくださった方が多かったので非常に不安になりました。
医師がわかりやすく患者さんにお伝えしているつもりでも、医学的な予備知識がないために実はあまり伝わっておらず、医師の自己満足に終始しているのではなかろうかと感じたのです。
後で紹介しますが「膠原病はからだから消してしまうのが難しい病気」です。うまく病気を制御し「共存」していくべき相手とも言えます。
したがって膠原病と上手に付き合っていくには医療従事者側だけでなく患者さん側のちょっとしたテクニックも必要です。
私たち膠原病の医師は外来の現場で患者さんにそのテクニックを伝えているつもりなのですが、私たちが思っていたほど伝わっていないことと、一方で患者さん方がそのような知識を欲していることをこの講演を通じて痛感しました。
つまり、本来ならば避けることができるはずのリスクや心身の負担を多くの患者さんが無駄に抱え、我慢を強いられているのではないかという危機感を覚えたことが本書執筆のきっかけでした。
目次
本書で膠原病を学ぶ上での注意点
これだけは知っておいて欲しい:膠原病診療にかかわる基本的医学知識
- 1.免疫・炎症とは?(難易度★☆☆)
- 2.自己免疫疾患・膠原病とは?(難易度★☆☆)(コラム1)筆者による膠原病の定義(難易度★★☆)
- 3.膠原病治療の基本は「上手に付き合う」ことです(難易度★☆☆)
- 4.膠原病治療(免疫抑制療法)で使う薬について(難易度★★☆)
- 5.ステロイド薬とは?(難易度★☆☆)
- 6.狭義の免疫抑制薬とは?(難易度★★☆)
- 7.分子標的薬とは?(難易度★★☆)
- 8.膠原病治療の考え方①~寛解導入療法から維持療法まで~(難易度★★☆)
- 9.膠原病治療の考え方②~治療がうまくいかないときの2パターン~(難易度★★☆)
- 10.膠原病治療の考え方③~関節リウマチの場合~(難易度★★★)
- 11.膠原病治療の考え方④~天秤理論~(難易度★★★)
- 12.入院で行うこと(難易度★★☆)
- 13.把握しておきたい病気のマーカー(難易度★★★)
- (コラム2) 医学の世界にはまだわかっていないことがたくさんあります(難易度★★★)
外来通院学Ⅰ.~日頃から心がけておきたいこと~
- 1.まずは病気を受け入れましょう(コラム3) 膠原病内科医は患者さんを膠原病と診断した瞬間から生涯を見据えた診療をしています
- 2.薬の飲み忘れに注意する
- 3.近所にかかりつけ医を持ちましょう
- 4.「感染に注意して」に込められた意味を理解しましょう
- 5.定期的にケンシン(健診と検診)を受けましょう
- 6.インターネット情報の考え方
- 7.主治医が変わることを見越して治療歴を整理しておきましょう(上級者向け)
- 8.妊娠・出産の考え方
外来通院学Ⅱ.~トラブル(感染症)時の対応~
- 1.風邪をひいたときの対応
- 2.嘔吐下痢症の対応策
- 3.帯状疱疹を知っておきましょう
外来通院学Ⅲ.~診察時の取り組み方~
- 1.患者さんが医師に伝える内容について
- 2.医師にとって理想的な外来診療の流れを知っておきましょう(コラム4)処方箋をもらったらまず内容を確認しましょう (コラム5)お薬手帳は必ず毎回持参しましょう
- 3.処方への感想を遠慮せず伝えましょう(コラム6)数字を使って経過を伝えてみませんか?
- 4.遠慮せず個人的な都合を伝えましょう
- 5.後発品(ジェネリック医薬品)の考え方
- 6.外来受診に費やす時間をできるだけ短くする方法
著者
- 前島 圭佑
- keisuke Maeshima
- 大分大学医学部内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座 助教
- 略歴
- 1978年 大分県津久見市生まれ
- 2003年 大分医科大学(現大分大学医学部)卒業
- 2003年 大分大学医学部 第一内科 研修医 以後、九州厚生年金病院(現JCHO九州病院)、津久見市医師会立津久見中央病院を経て
- 2006年 大分大学医学部 第一内科(膠原病内科)医員
- 2008年~2010年 産業医科大学第一内科(田中良哉教授)訪問研究員
- 2012年 大分大学大学院医学系研究科 博士課程 修了
- 2014年~2016年 カリフォルニア大学サンディエゴ校リウマチ学講座(Gary S. Firestein教授)訪問研究員
- 2016年 大分大学医学部 内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座(膠原病内科)助教
- 主な資格・所属学会
- 日本内科学会(認定内科医、総合内科専門医)
- 日本リウマチ学会(専門医、指導医、評議員)
- 九州リウマチ学会
- 日本臨床リウマチ学会
- 日本臨床免疫学会
- 日本免疫不全・自己炎症学会
- 主な受賞
- 2010年 欧州リウマチ学会賞(Abstract Award)
- 2017年 日本臨床免疫学会賞(症例報告賞)