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ドクターさわやまの「当世健康講座」:亭主を早死にさせる10か条

第8条 息切れる”「運動不足 ジム行きな」

最近、駅の階段や坂道を登るたびに息が切れるので、途中で立ち止まって息を整えるようになったヘビースモーカーの夫が妻にこのように話しました。ところが妻いわく「あなたこのごろ運動不足なんですよ。スポーツジムに入会して自転車こぎでもなさったら」

(イラスト)沢山俊民著「患者さんとスタッフのための心臓血管病ABC」日本医学出版 2003 より引用

それじゃあ、とジムで運動を始めてみた夫ですが、息切れは悪化することはあっても一向に改善しないのです。

皆さんはここまで読まれたところで気づかれることは何でしょうか?

そうそう、この夫が訴える症状は「肺気腫」によるものですよね。「ヘビースモーカーで労作時に息切れ」と聞けばまずは最近増えてきたこの疾患を頭に浮かべてください。このことは呼吸器内科を受診した夫が胸部レントゲン写真と呼吸機能検査の結果で判明しました。

治療として「早急の禁煙」は言わずもがなで、あとは腹式呼吸をマスターすることです。なぜならこの疾患では、呼吸による肺のふくらみが制限されるので、せめて横隔膜を使う複式呼吸で補うことになるのです。残念ながら、その進行は遅らせることは可能でも犯された肺胞を元の状態に戻す方法はありません。

つぎにこのような症状を起こす異常としては、種々の原因による貧血や心不全が挙げられます。心不全として多いのは、高血圧を放置し左心室に負担がかかった方々をはじめ、心筋梗塞や弁膜症で心筋に負担を強いられた方々に見られる症状です。これらに関しては聴診を始め心電図や心エコー検査で確定診断が可能で、薬物によって心不全の進行を遅らせることもできます。

何はともあれ、これまでには経験したことがないような症状が現れた場合には、ためらわずジムよりも先に内科医を受診することです。