連載

Home

list

倉敷開業物語

沢山俊民

「倉敷開業物語第2回」―さわやまクリニック院長 沢山俊民―川崎医科大学名誉教授

(2)実行に移した後の問題点とその解決策

1.「大学人が定年後に新規開業」自体、前例がほとんどない

大学人が定年後に実地診療を始めるとなれば、多くは開業中の父兄を継承する場合であろう。一方、定年教授の新規開業は私の知る限り稀であった。

2.「借金なし」でやれるのか

この点を妻に指摘されると気が重かった。結局この問題は資金削減という点で決着がついた。

3.妻への説得が得られにくかった

新規開業、開業資金、集客可能性などの面から説得に時間を要した。

4.集客は可能なのか

開業1年前から、私が川崎医大で常時診ていた患者約400名に対して退職話を持ちかけたところ、25%の方々は他の科にもかかっているため新しい教授に診てもらいたいといい、25%はこの際に紹介医に戻りたいという。ところが半数近くの方々が不便でもいいから引き続き私に診てもらいたいということになった。

5.宅地なので交通の便が悪い

バス停から診療所までは遠くないが、坂道であるし、バスの便も1,2時間に1本で利用客も少ない。事実、この路線には今でも乗客は私一人の場合も多い。倉敷駅からタクシーで1,500円はかかる。

ただ私の通勤に関してはバス便のタイミングがぴったりであることが判明した。最寄のバス停から倉敷駅始発7時55分バスに乗るとクリ ニックには8時15分頃に到着しゴミ出しの時間帯(8時30分まで)にも間に合う。また終発バスがクリニックに最寄のバス停6時40分でこれも帰宅時間としては最適であることがわかった。

6.時間予約制にすると採算が取れないか

診療は月曜から土曜まで毎日するとしても新患1時間、再来30分をかける時間予約制では毎日5,6人が限度で、黒字には縁遠いものになりそうだ。

7.期待の半面不安がつのる

既に述べたような期待が持てる一方、これらのデメリットも明らかになってきた。しかしとにかく「案ずるより生むが易し」の通り、問題点を残したままの出発という形になった。これは期待度が不安度を上回ったためである。

pagetopへ next